半月


この世で一番苦手なものは、機嫌が悪い時にかかってくる親からの電話だ。
気にしない気にしないと目を背けていた心のダムがついに決壊して涙が止まらなくなってしまった。やはり人の肉声というのは心に直接効くのだろうか。 

私の親はいわゆる毒親というやつだと思う。 幼少期からあらゆる方面へ言葉の呪いをかけられ、価値観を歪められ、自己肯定感と自由と考え方を奪われて生きてきた。
100パーセント親が悪いわけではない。考え方は人の生きる分だけある。分かっている。そしてそれが合わなかったというのはかなり大きいだろう。ここまでは仕方ない。
でも私の生きる環境の基礎を作ったのはあの人達だ。それは間違いない。基礎がグラついているのに上手く積み木はできるか?できない。心がめちゃくちゃなのに身体がうまくいくか?いかない。常にある不安感、頼る人がいない孤独、自分は何もできないという刷り込み、まわりの目線。努力しても崩れる積み木に、呆然とするしかなかった。
もちろん人のせいにするなという人はそう思ってくれて構わない。世の中私よりひどい環境で生き抜いている人もいるのだ。ただ、今までの経験というのは私自身にしか与えられていない。もし可能ならそのダメージを受けた後でもう一度、人のせいにするなと言えるのならば、私はもう何も言えない。強いなあと尊敬するしかない。

家を出る力がないのがいけないのだろう。
もしくは死ぬ勇気がないからいけないのだろう。
どうしても、自分を否定する言葉が最初に出てくる。
何もしていなくたって生きていていいはずなのだ。少しずつ頑張ればいい。やりたいことはやっていい。
考えが落ち着いた後は、自分だけ言葉に雁字搦めにされて馬鹿らしいといつも思う。もうDNAに刷り込まれて、訳が分からなくなってしまっている。
変わりたい。どうにか逃げたい。全力で。
自由がほしい。